成年後見制度とは

成年後見制度の背景と目的 

高齢者の犯罪被害防止と権利擁護の仕組み

 高齢者の増加に伴って、高齢者に対する虐待やオレオレ詐欺などの犯罪行為、悪質な商品販売などが確実に増え続けています。
 厚生労働省の実態調査では、生命に危険が及ぶような深刻な虐待を受けた高齢者が4人に1人という驚くべき結果が出ており、また、詐欺や悪徳商法などについても被害が毎年、より深刻なものとなっている実態が数字に現れています。

 警察庁統計では、2016年の「オレオレ詐欺」の被害総額は、約166億円、さらに「還付金詐欺」は約43億円という巨額なものとなっています。

オレオレ詐欺では、現金をだまし取る手口が減少し、キャッシュカードをだまし取る手口が増加しています。
キャッシュカード等詐取の被害者は97%が70代以上で、男女別では97%が女性であり、特殊詐欺全体(70代以上74%・女性79%)と比べ、高くなっています。

※ 警察官等を装いキャッシュカードを直接受け取る手口のオレオレ詐欺、官公庁職員や金融関係者を装った手法など、また未公開株などの有価証券や外国通貨等の取引名目の詐欺も増加中。

全国の国民生活センターに寄せられた2017年6月30日までの相談の件数。 

2015年度  929,865件
2016年度  889,103件 

高齢者の消費者被害相談 (独立行政法人国民生活センター集計)

高齢者の被害相談も毎年増加しています。
コンタクトの手段としは、次のようなものがあります。
1.通信販売     324,791件
2.訪問販売     80,748件
3.電話勧誘販
売   69,012件


具体的な手口

1.業者が消費者を電話で勧誘し、郵便などの通信手段で契約をさせるもので、不意打ち性が高く、強引な勧誘や虚偽説明などを平気で行う。

・申し込んだ覚えがない健康食品を「以前お申込みいただいた」と送り付け請求
・自作の短歌や俳句の新聞(雑誌)への掲載をもちかけられ、高額な掲載料を請求
・「市場の売れ残りを特価で販売する」とカニやサケ、エビ、ホタテをセットで送り付け請求

2.販売業者が消費者の自宅を訪問し、強引な勧誘や長時間に及ぶ勧誘などで商品やサービス販売する。

・貴金属などを無理やりに買い取る「押し買い」
・住宅リフォーム工事
・震災に便乗した屋根修理サービス
・シルバー人材センターを名乗る庭木のせん定
・設置義務化を悪用した火災警報器の強引な訪問販売

 「値上がり確実」「必ず儲かる」など、利殖になることを強調して投資や出資を勧誘する。
・CO2(二酸化炭素)排出権取引に関する儲け話
・金、地金を、長期分割、前払いで購入させる
・永代供養の権利。「高値で買い取ってもらえる」ともちかける

 報告事例の中には、訪問販売で和服・装飾品など総額で900万円もの高額商品を次々と契約させられたケースや、一方的な床下工事などで300万円もの負担が生じて、年金を使い果たした人など、高齢者の生活設計を根底から破壊するような深刻なものも含まれて巧みに利用した、極めて悪質な商行為といえます。
  しかし、高齢者が一人でこれらの悪質商法に対処することは簡単ではありません。
 自治体、警察、消費者センターなどでも、「不審な場合はきっぱりと断る」、「身近な人に相談する」などの対処法を訴えていますが、相手は高齢者のどこが弱点かを一瞬で見抜くプロであり、また、ひどい物忘れや痴呆に付け入られた場合には、手の打ちようがないようにも思えます。

「成年後見人」にできること

 成年後見制度はこのような、悪質犯罪またはその類似行為から判断能力が不十分となった高齢者・障がい者を守ることができます。後見人には、そのよう不正契約を取消す強力な権限が与えられていますが、後見人の存在自体が悪質な商取引や犯罪からご本人を守る大きな楯となります。内閣府においても、法務省、厚生労働省、警察庁などが協力して認知症高齢者等の保護のため成年後見制度を推進しています。

 成年後見制度は「法定後見」と「任意後見」という二つの制度から成り立っています。

法定後見制度

 認知症などで既に判断力が不十分となった人について、家庭裁判所が適切な保護者を選任する制度で、
本人の判断力の程度により、「後見人」「保佐人」「補助人」が付けられます。「後見人」の場合には、本人に代わって本人の財産管理や生活に必要なすべての契約行為(介護サービス、施設への入居契約など)を行います。
また、後見人は本人の財産や生活全般を守る義務を負っており、不当な売買契約などが行われた場合には、
その契約を取り消す法律上の権利も与えられています。

 概要は以上のとおりですが、当サイトの「ビジュアル解説>法定後見の仕組み」で詳しく説明していますので、
ご覧ください。

任意後見制度

 正常な判断力がある間に、本人が自由意志で選んだ後見人との間で、公正証書による「任意後見契約」結んでおきます。判断能力が不十分(認知症等)になった時には、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督の下で、任意後見人が本人に代わって財産管理や生活上必要な契約など行います。
任意後見人には契約取消しの権限はありません。

 


 いずれの場合にも、後見人は本人の意思を最大限に尊重し、心身の状況や生活の状況に配慮しながら普通の生活が
維持できるように、本人のために最善の努力をするよう義務付けられています。したがって後見人はその与えられた
権限を活用し、また、本人との緊密な連絡を保ちながら、判断力の低下した高齢者を事故や犯罪などから守り、
安心できる生活環境を維持していく役割を果たします。

 残念なことに、この「成年後見制度」はまだ十分に知られておらず、制度のスタートから既に16年が経過しましたが、全国での累計利用状況は約20万件(2016年12月時点)と低調です。解決すべきいろいろな問題も抱えていますが、現在でも認知症高齢者が525万人(2015年)と言われる中で、この制度の意義とその重要性が、一人でも多くの人々に理解され、社会に浸透し定着するよう、努力して行きたいと考えます。

このような状況を大きく改善する目的で、平成28年4月に「成年後見制度利用促進法」が施行されました。

この法律では国と自治体が責任を持って、成年後見制度普及のために国民に対する制度の周知徹底を図る方針が定められています。今後の具体的対策に期待したいと思います。

 概要は以上のとおりですが、当サイトの「ビジュアル解説>任意後見の仕組み」で詳しく説明していますので、ご覧ください。

ページの先頭へ